第21話【いざ、コンサート!】

いつものように、学校が終わってS口君の家に向かっていました。
でも、何か、楽しいはずのバンド練習なのに、
「また、怒られるのかな?」とか思うと気が進みませんでした。

そして、S口君の家に付き、彼の部屋に入ると、
もう、皆は来ていたのですが、何か、雰囲気がいつもと違った。
皆、心無しか、ニコニコしているというか、
安心しているというか。

「どうかしたの?」と聞くと、
H太さんが車で事故を起こして、入院したということだった。
不謹慎な事だが、自分も何かホッとしてしまった。
もう怒られなくてすむ、一緒にバンドやらなくてすむ。
皆の様子をみて、同じ事考えていたんだなと思うと、
ちょっと安心した。

さて、もう自分達だけでバンドやらなくてはならなくなったので、
レパートリーを最初のBOW WOWの曲に戻し、
仕切り直しです。
もう、コンサートまでは1ヶ月を切っていたので、
本番に向けて追い込みです。

ようやく、楽しいバンド練習が戻ってきました。
自分はまだH田君に色々教えてもらいながら、
毎日、ギターの練習に明け暮れていました。

余談ですが、H太さんがメンバーに加わった時に、
彼が持っていたFenderのStratocaster(本人曰く’72年製)を
使え、と言って貸してくれました。
そして、コンサートが終わるまでは貸してやる、と言われたので、
コンサートは何と、Gibson LespaulとFender Stratocasterで
行く事になりました。
当時の高校生としては、何と豪華な事か。

そして、いよいよ、コンサートの日。

場所は、市民会館大ホール。
機材を持ち込み、初めて、ステージの上に立ってみました。
客席は700〜800人は入る場所だったので、
客席の上の方まで眺めると、凄く広く感じました。

そして、初めて楽屋という物に入りました。
他のバンド(ほとんどが先輩達)の人が
楽器をチューニングしたり、演奏する曲の話をしていたり、
何か、ミュージシャンみたいだ、と思いながらちょっと緊張してきました。

そして、リハーサルが始まりました。
ステージの上では、誰かがマイクに向かって
「テス!テス!」とか言ってるんだけど、
何、やってるんだか、よく分かりませんでした。

何か、曲をやって下さい、というので、曲を演奏し始めたんだが、
何か、音がよく聞こえない、というか、
いつもの練習している環境と音が違ってきこえるので、
自分の弾いている音がどれなんだか、
他のメンバーが弾いている音がどれなんだか、
よくわからない感じでした。
とりあえず、ドラムの音はきちんと聞こえるので、
それに合わせて演奏していました。

曲が終わって、「モニター聞こえますか」とか
聞かれたんだが、「モニターって何だ?」状態だったので、
ボケ〜ッとしていると、H田君が
「このスピーカーだよ」ってステージの前の方にある
スピーカーを指差して教えてくれた。
どうやら、そこから他のメンバーの弾いている音が
聞こえるらしい。
まあ、でもドラムの音は聞こえてるし、他のメンバーの
音もステージ上のアンプからなんとか聞こえてるので
大丈夫でしょう、程度の認識しかなかった。

そして、リハーサルも無事終了し、楽屋に戻って、
衣装に着替えてました。まあ、衣装と言っても、
普段着よりは多少、よそ行きの服という感じでしたが。
それでも、着替え終わって外を眺めると、
お客さんが集まって来ていて、「おっ、何か、やばいな」という感じでした。

なにしろ、高校生バンドばかり4つも集まったコンサートでしたので、
それぞれのバンドが同級生を呼べば、かなりの人数になります。
多分、400〜500人くらいは入っていたかと思います。

そして、開演の時間が迫ってきました。
自分達のバンドは1年生バンドで出番は一番最初でした。
皆、楽器を持ってサイドステージに集まりました。
ステージは幕が降りていたので、客席の様子は分かりませんでしたが、
かなりザワザワという声が聞こえていました。

進行役の音楽鑑賞協会の人に、楽器をセッティングして下さい。
と言われたので、各々、アンプの所に行き、
シールドを差し込んで、スイッチON。
ドラムのS口君もセッティングが終わり、準備OKです。

客電が落ち、幕が上がり始めて、ついにコンサート開始です。

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