第14話【別れは突然に】

中学2年のもう少しで3月になろうかと言う頃。
夕飯を食べ終わった後、母親から話があるというので、
弟と二人で居間に呼ばれました。

「転勤する事になりました。4月から新しい土地で暮らす事になります。」
父親は学校の教師なので、定期的に北海道の空知管内で
移動する事が決まっていました。

ちょうど、来年は高校受験も控えているので、その前に
転勤した方が良いだろうという判断だったみたいです。
まあ、ある程度は覚悟をしていた事ですが、
いざ、その状況になると動揺はありました。

なにより、今、やっとみんな楽器が揃って、これからバンドを
やろうと盛り上がってる友達に何と説明しようかと悩みました。

終業式が近づいて来た頃、朝の朝礼で、担任の先生が
自分が転校する事をみんなに告げました。
みんなはびっくりして、「どうして?」という感じだったのですが、
親が学校の先生で転勤があるのは仕方ないんだ。
と説明するしかありませんでした。

「バンドはどうするの?」
一番、つらい質問でした。
「じゃ、終業式の日に楽器持って来て演奏しようよ」
と言ってくれたのですが、実はそこでもう一つ問題がありまして。

実は自分はスキージャンプの選手もやっていて、
ちょうど、終業式の日に大会がありました。
今度、転校する地域はあまりジャンプが盛んでは
なかったため、この大会が最後になると思っていました。
そのため、どうしてもこの大会は出たかったのです。

そういうわけで、初めて組むはずだったバンドは
一度も一緒に音を出す事無く、幕を閉じてしまいました。

数年後、その友達と会った時、聞いた話では、
その後、他の人がギターを始めて、3年生の学校祭に
ライブをやったと聞いて、少し、ホッとした気持ちになりました。

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