第15話【近所迷惑してみたい】

4月になり、新しい土地に引っ越していました。
そこは今まで住んでいた所より少し北の方の
のどかな農村地帯でした。

始業式の日に学校に行くと、校内で始めて会った同級生が
いきなり声かけて来てくれて
「転校して来たの?」
「どこから来たの?」
何か、ホッとしました。

前に住んでいた所は(もう閉山していたけど)炭坑地帯だったので、
結構、みんな気が荒かったけど、
今度、来た所は農村地帯のせいか、
のんびり、おっとりして、何か落ち着けました。

一つ、驚いた事は「給食」なんですけど、
おかずは出るけど、ご飯は出ない。
「何でだろう?」と思ってたけど、すぐに分かりました。
農家の子が多いので、米は売る程ある(まあ、売ってるんですけど)
ので、おかずだけ出せば大丈夫だろうとの事でした。

新学期も始まって、少し経った頃、
他のクラスの子が3人、自分の所に来て
「ギター、弾けるんだって」
その瞬間、ピーンと来ました。
やっぱり、どこ行ってもバンドやってる人はいるんだな。と

ギター、ベース、ドラムをやってる人でした。
で、ビートルズをやりたいので、
ギターやってくれないか。と
今度、音を出すから来てよ。という事でした。
「ところで、どこで練習やるんだろう???」

それから、何週間か経って、
日曜日の朝に、迎えに行くから楽器用意して待ってて、
というので待ってたら、ドラムの子の父親がトラックを
運転して迎えに来てくれました。
で、楽器を乗せて出発したのですが・・・

トラックに乗って行くと、何か、周りが全部田んぼの中に
ポツンと家が一軒有って、
「ここだよ」というわけで、楽器を降ろしました。
「どこで練習するの」と言うと、
「あそこだよ」と指差されたところを見ると、
家の横に違う建物が有って、
中は奥の方に草とかが積まれている所でした。
所謂、農家の「納屋」という所です。

もうすでに、他の3人の楽器はスタンバイしてあって、
自分もアンプを持って行って、用意しました。
「ここって、音出しても大丈夫なの?」
と聞いたら、
「周り、見てごらん」
確かに、何もありません。
隣の家も見えません。
近所迷惑したくても出来ません。

自分も速攻で楽器を用意して、シールドをアンプに繋ぎ、
ヴォリュームを最大にして、音を出してみました。
「気持ちいい〜っ」
当時はまだ、エフェクターなんて持っていなかったので、
家で小さい音で弾いてた時は、音が歪むなんて事は
無かったのですが、ヴォリュームを最大にすれば、
確かに音は歪んでいました。

「これがリッチーの音だ」

何か、嬉しくて「Smoke on the water」とかKISSの曲のリフとかを
ベラベラ弾いてたら、
「うわー、凄いギター弾けるんだね」
とか言って来たので、
「やべ、やりすぎちゃった」
と思いながら、やっとバンドが出来るんだ。
という喜びに浸っていました。

ところが・・・

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